清和堂明朝開発秘話 その3

2009.05.07

漢字の太さ調整について。書体は一文字だけの造形では完結しないので、組版面を作って読む視線の流れができて、初めて部品の集まりの集合体として全体像が見えてきます。この時にそれぞれの文字の太さに少しでも偏りがある場合、その部分が黒さのムラとして見えてしまいます。

写研に入った当初、まだデザイン課に配属される前に人事部の方から「人間の目は100分の1ミリの違いも読み取る精度があるから、我々はそいうレベルで文字を作っている、とデザイン課の偉い人に教えてもらいました。」と言われました。実際に文字制作に入り、その意味がわかりました。他の文字とのほんの少しの違いが目に飛び込んできて、大きな引っかかりとなってしまうのです。文字デザインは一文字かたどって安心していても、それで終わりではなく、そこからの書体全体の細部調整がフォント制作の本作業になるのです。

清和堂明朝Lも同じです。特に細い明朝体は少しの太さムラも目立ってしまいます。難しいのは特に画数の違いによる太さの変化です。画数が多いと線画の混み具合で密度の違いが黒さの濃度ムラに見えてしまうので、画数によって太さの調整が必要になってきます。清和堂明朝Lでは実際全体制作時間のかなりの割合がこういった調整作業となりました。

プロフィール:

N.Tada(清和堂フォント タイプデザイナー)

株式会社写研で13年間フォントデザインに携わる。石井賞タイプフェイスコンテストで2位入選。佳作2回。本蘭明朝体台湾向け字種制作、けんじ隷書仮名、各書体字種増作業、写研2000年発表の本蘭ゴシック8ファミリーの仮名デザイン(「週刊新潮」「プレジデント」「BRIO」その他で使用)、サインペン教科書体「イダサイン」企画制作、新書体制作監修・仮名開発担当など。 1989年千葉大学工学部工業意匠学科視覚情報伝達講座卒業。株式会社写研文字開発デザイン、印刷会社デザイン部門などを経る。現在、清和堂フォント タイプデザイナー。

http://www.seiwado-font.com/

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